山手にて

約一年前の出来事。
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石川駅を降りて急な坂をあがると、ブラフ18番館があった。
館に近づくごとに、ピアノの音が大きくなる。
建物の中ではピアノの生演奏をやっていた。
しばらく外の芝生を歩き、まばらに立つ木陰の間を抜けて、階段を登る。
見晴らしがよい場所にでる。
あまり見慣れない傾斜の町並みを眺めて、また館に戻る。
ピアノの音がまた、大きくなっていく。
もののけ姫」「カノン」「ねこバス」「When a man loves a women」プレスリー…、覚えているのはこれくらい。
建物のなかに入って、大きめのソファーに座って、窓際を見る。
古い硝子の嵌め格子の上を、羽蟻がゆっくりと歩いている。
遠くには広い芝生とそれに続く巨大な橋が見える。
芝生の上にはたくさん人が橋の方に向かって歩いている。
そんな風景を鳴り響くピアノの音を聞きながら見ていて、
ふと、もっと自由でいいのではないかと思った。
自分のこれまでの生き方や考え方が、狭苦しいものに感じた。